これを運命というのなら
それからの日々はあっという間で―――。

みんながみんな、部長も畑中さんも私なんかも引き止めてくれたんけど。

8ヶ月後、3人であのビルにいる。


「綾乃、俺はもう部長ちゃうで」


「あっ……!社長でしたね」


癖でつい、部長と呼んでしまう私をまた突っ込んで。

そのやり取りを聴いている畑中さんは笑い、副社長!と私が呼ぶと。


「俺は、畑中さんのままでええよ」


照れ笑いで言うという毎日の中。


ワンランク上の鶏肉料理のお店の準備は着実に進んでいて。


忙しいながらも、穏やかで私なりに幸せな毎日を送っている。


たまにしか会わなくなった恵美は、生き生きしてるね!と言ってくれたし。

オープンしたら、働かせてください、と言ってくれたスタッフもいる。


遅くなったから送ってくよ、と言ってくれた社長の仕事終わりを待ちながら―――

27階から見るオフィス街は、日付けを跨いでいても灯りがキラキラ輝いて見えるから。

綺麗!と、呟いていたらしい私を呼ぶ柔わらかく。

綾乃、と。


振り向くと、ゆっくりした足取りで横に立って。

視線を窓に向けて、綺麗やな。

はい!と、社長に視線を向けなくても窓ガラス越しに視線が合わさっている状況で。


「軌道に乗ったら…..俺の女にならへん?」


はい?今……なんと仰いましたか?

社長の女?

本気で? 夢ではなく?


ひとり、頭の中で大パニックが起きてしまっている。

だから…….その……


「どういう意味で?」


吹き出して、ひとしきり笑った社長を茫然と見つめていると。


女としてに決まってるやろ……好きや……綾乃。


私は社長の腕の中に包まれていた。
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