これを運命というのなら
「あの……もう1回言ってください?」


抱き締められたままの状態で、肩に額を預けて訊くと。

頭上から、どっちを?

それは笑い交じりの優しく響く甘い声で。


「どっちも……です」


思わず、そう言ってしまった。

その声でどっちも伝えてほしかったから。


「……軌道に乗ったら俺の女にならへん?綾乃……好きや」


ちゃんと同じ声で伝えてくれた社長に、YES以外の答えは?

今回はよく考えろ。

なにそれ?って思う私がいた。

俺様で、今までYES以外は受け付けないと言ってきたのに……

今回だけはNOの選択肢も与えてくれるなんて。

それに……よく考えろ、なんて言いながら腕の中に私を仕舞うんですか?

緩やかに愛おしいそうに、ふんわりと。


答え………同じ気持ちやけど今……YESと言えば。

きっと私は意識しすぎて仕事に影響が出る気がするから。


「社長の気持ち……嬉しいです。だけど今は……仕事に影響を与える気がするので、1回忘れていいですか?軌道に乗った時にまだ同じ気持ちだったら……同じ言葉をくれますか?」


これが今、私に言える精一杯の返事。

社長なら受け入れてくれる、と信じて。


わかった、早すぎたな。
ごめんな。

頭をポンっとして離れた社長を見上げると、優しく微笑んで、帰るか?ともう一度ポンっと手が置かれて。

頷いた私の手を引いて、ソファーに置かれた鞄を持ってくれて―――

アパートまで送ってくれた日。

なかなか寝付けなかった私は、翌日。

畑中さんに、そういうこと?みたいな目で見られていて。

全てを察しているのだと理解した。

まさに千里眼の持ち主!!
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