これを運命というのなら


「どうしてこの会社を選んだ?」


目の前にいるザ・イケメンで、スーツをビシッと着こなして。

ブランドのネクタイを締めたスタイル抜群な面接官の男性に訊ねられた。


「この会社で大好きな接客業を通して成長したいからです。私を成長させて下さい!」


深々と、そう言って思わず立ち上がって頭を下げた私に。

その男性は、とりあえず頭を上げて僕を見て。

頭を上げると、二重の少し切れ長の瞳が私を見据え。


「わかった!成長させてやる!僕が責任を持って、藤崎綾乃を!」


隣の男性が驚いて、静止しようとしているのさえもやんわりと遮り。

採用だ!と、言い放ったんだから。

即採用に驚いたのは私も同じで、ありがとうございます、とまた深々と頭を下げた。



それが、遡ること13年前の伊藤陽希との出逢いだった。
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