これを運命というのなら
腕を額に乗せ替えて、ゆったりと私に送られる視線と同時に、おはよ。

それもまた色気があって、朝から心臓は静かな空間で音を刻むんやから、社長にも聞こえてるんじゃないかと思う。

にも関わらず、ガバッと身体を起こして、頭ポンっをして。

背伸びをして、シャワー浴びてくるわ。

ここで寝た朝のお決まりの台詞を吐いて、社長のバスタオルと下着や着替えが置いてある専用ロッカー付きの、このビルの共用スペースのシャワールームに向かう背中に。

行ってらっしゃい、朝ご飯は何を食べますか?

必ずと言っていいくらい、腹減ったって言うってわかっているから先に聞くようになったのはつい最近で。


「パンなら甘くなければ何でも」


背中を向けたまま応えて社長室を出て行った社長は、甘いものが苦手で。

デザートの季節限定から定番の新作を試食するのは、いつも畑中さんか私。

どっちかが納得した味ならいいらしい。

おかげで畑中さんは太ってきたらしく近くのジムに通い始めたんやけど、太らない体質の私を、羨ましいな、と。


社長も食べる時は食べるのに太らない体質やから、1個じゃ足りないやろうから。

5個くらいのサンドイッチのパックにしよう。
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