これを運命というのなら
「綾乃!俺のスマホ知らへん?」


今更ながらデスクにもソファーの前のテーブルにもない事に気づいて訊いてる俺は、かなり綾乃に甘えている。

気が利くというか、気が回る。

ちょっとした指示でも、その先を読んで動く。

そこなんだよな。

綾乃にしか任せられない、頼めない仕事があると言ったのは。

ソファーで寝ている俺を起こして、とも。

朝ご飯とコーヒーを買ってきて、とも頼んだ記憶すらなくても。

こうして、ボソッと呟いた心の中の言葉から。
俺をよく見ていてくれて、気を回してくれているからなんやろうけど….…

綾乃が居なくなったら、俺はどうなるんやろ?

そう思ってしまうくらい。


「知りませんよ……最後にいつ触りました?」


「覚えてないねん……」


仕方ないな、と言いながら――ソファーに座りながら下を覗いて。

ありましたよ!と、立ち上がって持って来てくれた綾乃に、ありがと。


手に持ったままソファーに来て落としたんやないですか?

たぶんな、と答えれば。

それ以外に何があるんですか!


こうやって、俺に言うのも姉貴以外では綾乃だけやな。


そして、また――綾乃!と呼べば。

はい!と返事をして、俺に視線を向けてくれる。

畑中には、頼りすぎやろ?って言われるんやけど……ついつい頼ってしまうのは、綾乃やから。

俺にとっては、唯一無二の存在になっているから。
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