これを運命というのなら
ここって……?と、首を傾げて。

地下の駐車場に車を停めた俺を見て、首を傾げるから。

ここの18階、と車を降りた俺に続いて、綾乃も慌てて車を降りて、小走りに着いて来て。


「誰の部屋ですか?」


「俺の部屋に決まってるやろ!」


え?と、横を歩きながら。

確実に、無意識に手を握って俺を見上げる。


その驚きの問いには答えない代わりに手を握り返して、手を引いて。

乗せたエレベーターは18階のフロアに着いて、そのまま角部屋へ。

カードキーでドアを開けると、背中越しから覗き込んだ綾乃が、うわっ!と感嘆の声を上げた。


開け放っなしのリビングダイニングに続く廊下を進めば、人を感知するセンサーで電気が付き、夜景が一望出来るベランダに通じる窓があって。

窓を開ければ、カーテンを揺らして僅かな海風を感じられる窓の前からは、薄っすらと灯りが見えて。


「カーテン開けていいですか?」


ええよ、と答えると、手を離して。

カーテンを開けた綾乃は、予想通り――綺麗!と呟くように言ったかと思うと振り返って。


….…どうして私をここに連れて来てくれたんですか?


こういう所は疎い綾乃に、


「俺の女にならへん?好きや……綾乃」


その答えを伝えると、綾乃の瞳からは涙が溢れ出していた。

どうして泣くん?

嬉し涙………ってやつと捉えていいのかわからずに、ただ綾乃を腕の中に包み込んでいて。


「答えは?」


「YES以外は?」


「……もういい加減にYES以外は受け付けへん」


そう、もう限界やねん。

あれから3年半。

もう一度を言うまでの、この時間だけが長かった。

2人で過ごす時間の中で、数え切れないくらいに待って。

手を握り、癖のように頭を撫で、肩や腕や腰に触れて。

一時期、社員たちが勘違いするくらいのスキンシップをとってきたから、余計にかもしれない。

プライベートの関係性で例えるなら、友達以上恋人未満といった感じなんやろな。
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