これを運命というのなら
「引越しもまだで何もしてへんし、これから2人で揃えていこか?」


夜景に視線を映して、綾乃の腰を抱きながら言うと
――案の定。

2人でとは……一緒に住もう的な?と俺を見上げる。

本当に疎いな。

付き合った経験がないわけでもないやろうに。

他には驚かされるくらい気が回るくせに。


「いつかはな……同棲したいとは思ってる。だけど、まだ俺の夢は全て叶ったわけやない。その夢に1歩でも近づけた時、叶った時かはわからへんけど。その時の下準備みたいなもんや」


なるほど!と頷いた綾乃に甘えるとするなら……今でも散々、甘えてるけれど。

もっと甘えるなら、休みの前日とかはここで飯を作ってや、と。

朝を一緒に迎えてや、と伝えると。

窓越しに視線が合って、はい。

綾乃が柔らかく微笑んだ。


「それならさっそく、明日行きませんか?」


自分の部屋に置くものを選ぶように、はしゃいだ感じで。

俺の腕に飛びつくようにくっついて、そう言われたら――行くか!


綾乃のアパートに送る道中も、どんなんがいいかな?とか言いながらはしゃぎっ放しの綾乃を横目に、可愛いな、と思いながら。


「少女趣味とかはやめてや?」


「私……少女趣味に見えます?大丈夫です!落ち着く感じにします!」


そうやな。

お互いが落ち着ける色合いの空間にしたい。

先のことなんてわからないけれど、プライベートでも綾乃と歩む人生の1歩を踏み出した今日。

高揚感は、自分でも驚くくらい高まっていて。

握っていた手に力を込めると――


陽希さんの手、好きです。

ん?俺の手?

大きくて指が長くて綺麗で。

そうなん……?

はい!私ね、手フェチなんです。

好みの手ってことやな!



小さく頷いた綾乃のはじめて知った心理的傾向に。

出会ってから3年、まだまだ知ってるようで知らない綾乃をもっとたくさん知りたいと思ったんや。
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