これを運命というのなら
心がふわふわしていた。

何とも表現しがたい、顔の緩みが抑えることの出来ない、今までに恐らく経験がないだろう温かい気持ち。

もう今なら、陽希さんの気持ちに応えても私は大丈夫、と思えたのはきっと。

1度目の時よりも、2度目の時よりも、冗談交じりの時よりも気持ちが膨らんでいて抑えきれなかったから――…言ってくれるタイミングを待っていたんやと思うから。

自然と指先で、陽希さんの唇が触れた自分の唇を触っている。

もっと触れていたかった。

あんな食べられるようなキスをしたのは、26年間生きて来て初めての経験で。

触れただけで、身体の芯から痺れるような感覚になったの初めて。



「恵美?私な……彼氏できた!」


「いつ?誰?」


帰って来た恵美にさっそく報告すると、恵美らしい冷静な声のトーンだけれど、目を丸くしていて。

社長、今日。

特にこの時はまだ自分の気持ちさえも、陽希さんに気持ちを伝えられていたことすら話していなかったのもあって。

今日までの一部始終を話す羽目になった。


イケメンで仕事出来て完璧だからこそ大変やろうけど、大事にしてくれる!

肩をポンっとしてくれた恵美は、店近くのアフターや同伴前に店を利用してくれているラウンジで恵美がカウンターレディをしているから。


恵美は店にはアフターや同伴で来ないけれど、陽希さんが出入りしているから知っているわけで。

それなりのモテ話もたまに恵美から聞いているだけに、恵美の言葉には頷いていて。

ずっと、先のことはわからないけれど一緒に居られると思っていた。
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