これを運命というのなら

story:3

家具選びを終えてから、ようやく秋らしい気候になった頃―――

陽希さんは引越しをして、私も出入りするようになって。


社内に陽希さんが俺の女と言ったおかげで、瞬く間に店の従業員にも広がり―……妬むような視線を送られていたのも1ヶ月程。

今では、みんながみんな認めてくれているのは――忙しくも慌ただしい日々を送っていて、いつ休む?
なんて相談をしつつも。

休まずに仕事をしている私たちは、相変わらずの仕事人間やからなんやろな。


「明日なんですが……朝から日本酒の仕入れに行きたくて……陽希さんち行ってもいいですか?」


新しい日本酒を仕入れたくて、陽希さんちからの方が行きやすく……訊いてみると。


俺が車出す、と。

ランチ中の箸を進めながら言ってくれたんやけど、陽希さんの仕事は?


「畑中がおるしどうにかなる。それに、1人で交渉するより俺がいた方がスムーズやろ!」


確かに、そうなんやけど。

距離的に片道2時間半ほどで、往復5時間。
私が個人的に新しい物を仕入れたいだけやのに……

黙ったままでいると、申し訳ないとか思ってるな。


私の気持ちは見透かされていて、小さく頷けば。


「俺の仕事でもあるし、綾乃と久しぶりのドライブみたいなもんや。気にすんな!」


柔らかい声音で、優しく微笑んでくれたら……もう言うことはYESしかないのは、久しぶりのドライブと思えば私も楽しみで嬉しいから。


「じゃあ……今日は行きますね!」


ついつい、一応は社内でもあるにも関わらず……はしゃいだ声になってしまうと。

いちいち言わんくても来たい時に行って待ってたらええやん。

またまた嬉しい言葉を、その笑顔でくれたなら……もう堪らないのに、ふと思うことがある。

陽希さんが、付き合って2ヶ月ほど経つ今でもキス以上は何もしてこないこと。

その間に私の私物に洋服、下着なんかも置いていて

何回か泊まっているのにリビングのソファーで寝ていたり。

先に行く、とLINEが入っていたり。

冷え切った隣を肌で感じた瞬間は寂しくなってしまう。
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