これを運命というのなら
「自分から惚れた女は……綾乃が初めてやから……要するに……大事すぎて迂闊に奪えない……」


これもまた今まで見たことがないくらい頬を赤らめて、恥ずかしそうに。

いつでも自信満々なこの人の姿が愛おしすぎて……笑みがこぼれて、そのまま笑いが止まらなくなってしまう。


「おいっ!……笑うなって言ったやん?」


額を軽く叩くから、痛い、と擦りながらも笑いは止まらなくて……

だって、あれだけモテて自分から惚れた女性が私が初めてやとしても、女性が喜ぶような言葉をサラッと吐いて、扱いさえ慣れてるくせに。

見たことないくらい困った、情けない表情で私やから抱けないって……涙が出るくらい可笑しくて。

愛おしい以外に何があるんやろ。

こんなに笑うとは思わんかったけど、自惚れではなかったことに安堵しつつ、肩口に額を預けると……


「泣かせるくらい……情けないんやけど……今まではな……」


この先に紡がれたのは、好きと言われて付き合って――自分から告白なんてしたことはなく。
若気の至りというか、欲求の赴くままに抱いていた、と。

それだけ、私は大事にされていて。

愛されているわけで、泣かせた責任とってください。

冗談で言ったのに、ええよ、と受け止めてくれた陽希さんは私を抱き上げてベットルームへ向かっていて、ベットに優しく下ろすと、私に跨り。


あと……綾乃を抱いたら……と、まで言うと短く息を吐いて。

黒目の瞳に私を映して――



「俺は今の仕事を死ぬか、そんな事はしないけど倒産しない限り辞める気はないから、寂しくさせたり。振り回したり、こき使ったりするやろな。それでも後悔せぇへんか?YES以外の答えは受け付けんけどいいん?」


つまりは、後戻りは出来ないと。

ずっと、俺から離れるな。

傍にいろ、と伝えたいんやと思う。

陽希さんらしい俺様な遠回しな伝え方に、YESの変わりに始めて私から唇を重ねる。
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