これを運命というのなら
そして――。

はぁ、と短く息を吐いた陽希さんは、堪えるように息を詰めた。

その一瞬、その顔から全ての余裕が消えて、眉が微かに歪んで……―

一筋の汗が頬から首筋に伝っていって。

切羽詰まったような表情の陽希さんの頬の汗を指先で拭うと、綾乃、と息の交じった掠れた声で呼んでくれて。

また息つく暇も与えてくれない、熱い深いキスに。

もっと、もっと!と、自然と陽希さんの腰を強く掴んでいて……私の腰も浮いていて。


甘い痺れが全身で感じて、私の世界の全てが陽希さんで埋め尽くされていく。


ふたつの吐息が重なった瞬間――何度目かわからない快感がザザーッと、背筋から脳天を駆け上がって。

はっ、と陽希さんの掠れた艶っぽい掠れた声と共に、ほぼ同時くらいに絶頂を味わっていた。


私の横に身体をドサッと身体を預けた陽希さんは、荒い息を整えながら……おいで、と荒い息を整えていた私に腕を広げてくれて。

黙って胸に頬を擦り寄せると、大好きやで、と甘く優しい響きの声が頭上に落ちてきて、私も。



大好きな人の腕の中。

溢れるくらいの愛情を注ぎ込まれて、安心する温もりに包まれて。

五感の全てで愛情を感じて幸せを噛み締めながら、瞳を閉じたまでは…――覚えてる。


綾乃……どこにおる?

陽希さんが苦しげに手を伸ばしてくれているんやけど――私はその手を掴むことは出来ない。

なんで?なんで?どうして?

私はここ!同じように手を伸ばしてる!

掴んでや!

叫ぶように伝えても陽希さんは、どこにおる?としか言わない。

陽希さん!と呼び続けて、目が覚めて。

夢でよかった……って、私を抱きしめながら寝息を立ている陽希さんに安堵して、また瞳を閉じた。


正夢になりませんように。
< 33 / 41 >

この作品をシェア

pagetop