これを運命というのなら
自分にと買った日本酒を、一緒に飲みますか?

いやいや、まだ飲むん?と答えた俺は日本酒があまり得意ではない。

ワインが苦手な綾乃とはそこんとこは正反対やな。

自分から日本酒を飲みたいと思って口にすることは先ずないわけで、綾乃はワインを飲みたいと思って口にすることはほぼない。

仕事がら仕方なくって感じやな、お互いに。


帰ってから綾乃が作り置きをしていた豚の角煮と味わったんやけど。

俺にはよくわからへんかったって話は置いといて――。


せっかくだからと寄り道をして、紅葉!と綾乃が言うから奈良公園まで来たんやけど。


「まだあんまり色づいてないな」


「そうですね……でも綺麗!」


無邪気に笑って、あっちも!


俺の手を引いて歩き出す。


わかった、わかった!

そんなに引っ張るな!、と言うと。

また無邪気に笑う。

だけど、綾乃は手を繋いだまま辺りを見回すようにクルクルと回るから。

自然と繋いだ手は離れて、それに気付いてキョロキョロして。


綾乃!?と、数歩後ろから呼ぶと、無邪気に笑って、腕を伸ばしてくるから。

ゆったりと、数歩の距離を縮めて。

手を握って、指を絡めて繋ぎ直すと、満足そうに微笑む綾乃の子供みたいな知らなかった一面が、可愛くて仕方ない。


心から惚れた女と感じる四季は、めっちゃ綺麗に見えるんやな。


綾乃……冬になったらイルミネーション見に行って、春になったら桜を見に行かへん?


行きたい!行く!


ほら、また無邪気にふわふわ笑って。


「夏は?」


「海くらいしか思い浮かばへん」


うーん……と首を傾げて、美味しい泡盛を仕入れるついでに沖縄!


そうやな、それもありやけど。

休めたらな、と応えると頬を膨らませる。

ほんまに可愛いな。
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