これを運命というのなら
オフィス移転する!

そう俺が宣言したのは、年の瀬の迫った12月。


「また、そんな大事なことを急に言い出すん?」


この頃には敬語も自然と外れた綾乃に、内勤社員の前で食ってかかる勢いで上目遣いに睨んでいる。


少し前から考えててん!

それが俺の答えなんやけど、綾乃からすれば。

考えてる時に相談してくれてもええやん!ってのが言い分らしい。

ごもっともやな、とは思っていても。

それが出来へんのが俺やねん。

俺様やと言われるんなら、そうなんやろ。


「畑中さんは知ってたん?」


今、聞いた。

そうやろな!畑中にも今、言うたんやから。

冷静で、俺が聞かないのをわかってる畑中は。

しゃーないやん、と綾乃を宥めるのに必死なんやけど。


「移転話はもう何を言うても場所も決まってるんやろ!反対しても無駄なんやろ!気に入ってた場所やのに!私は移転のあれこれは手伝わへん!」


涙目で訴えるように言う綾乃に、みんなが焦ってる様子やけど誰も何も言わず。

下を向いている中、畑中だけは冷静に綾乃を見つめていて。

何か言うたら?と、俺に視線を送っている傍らで。


はぁーっと、盛大な溜息をついた綾乃は。

疲れた、と。

外の空気を吸ってくる!


オフィスを出て行って、畑中に。

追いかけろ!と、社長室から気を利かせて、とってきた綾乃のコートと俺のコートを渡された。


綾乃なら、何しに来たん?とか言いそうやけど。

このまま口を聞かないのも困る、手伝ってもらわれへんのも困る。

追い掛けて、宥めて。

わかってもらうしかないな。

相手が綾乃やから、なおさら。
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