これを運命というのなら
綾乃が出て行きそうな場所は―――

たまに息抜きをしているあの場所しかない。


屋上広場のベンチで寒そうに、空を見上げて座っている綾乃を見つけて。


「風邪引くやろ」


肩からコートを掛けると、振り返って。

予想通り、何しに来たん?

電子タバコをつけて、追い掛けて来た以外に何があるねん!


「……言わんかったんは悪かったとは思ってる。ゆくゆくはもっと店舗を増やして、スタッフも増やしたら手狭やと思って移転を決めてん。そのためにはまだまだ綾乃が必要なんや。振り回すことも、この先もたくさんあるやろうけど。公私ともに着いて来てくれへんか?」


綾乃の横に座って伝えると、手を俺の太腿に置いた綾乃は涙目で。

その手を握って、指を絡めて握りなおすと。

出来るだけ振り回すんはやめてや、疲れるし、身体がもたへん。

俺をやっと見た綾乃に、わかった。

綾乃に倒れられたら、俺だけやない。

内勤社員、スタッフ全員が困る。


今までなら、めんどくさいから好きにしろ、くらいに思っていたかもしれへんけど。

綾乃は別格で、自分の女になる前よりも甘えてる気がする。


くしゃみをした綾乃に、戻るで!

立ち上がった俺のコートの袖を引っ張るから、ん?と言えば。

何でわからへんかな?

は?

手!繋いで!

はいはい!そう言えや!

察してや!

冷たくなった、お互いの手を握れば。

自然と瞳を合わせて微笑み合える。

なんやかんやで俺も振り回されてる気がするのは気のせいか?


あっ!そういえば……俺が電子タバコを吸ってるのは綾乃と付き合う前からで。

今までも普通に吸っててん。

著者の紫音の書き忘れか、その件がめんどくさいかツナギがややこしくなるから書いてなかったんやろ。

というわけで、俺は喫煙者やから忘れんといてや。

紫音曰く、これからはたまに書くらしいからな。
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