これを運命というのなら
手を繋いで戻ってきた俺らを見て、やれやれ、という顔をして。

普通に仕事をしているから、そこに関しては畑中が上手く言うてくれたんやろ。


そんなこんなでオフィスを移転したのが、年明けの2月。


店に出向いていた綾乃が、寒かったぁ、と。

前のオフィスから持って来たソファーにコートとマフラーを外しながら座ると、小さなくしゃみをして。


「何年経っても、大阪の冬は慣れへん。風が冷たすぎて痛い」


「そやなぁ……って奈良の方が寒いんちゃう?」


綾乃は奈良の出身で大学で大阪に出てきたから、ずっと大阪の俺からすれば、奈良の方が寒いんやろな、と思ってしまうんやけど。


奈良でも綾乃の実家は盆地やから底冷えするから寒い、らしくて。

大阪は風が冷たくて痛いから寒さが違う、らしい。

確か福井出身の畑中も寒さが違うって言うてたな。

雪が降って気温が下がるから寒くて、大阪は風が冷たくて空気がカラカラしていて寒くて痛い、と。


「綾乃?年末年始の休み、実家に帰れてないやろ?」


31日は常連客と店でカウントダウンして、元旦は2人で初詣に行って。

2日は恵美ちゃんと初売りに出かけたはずで、3日から営業していたからな。


「あー!うん、今年は帰れてないけどなんで?電話はしたで」


パソコンを立ち上げて答えた綾乃に、日曜日に行かへん?

また急に何やねん?って顔をして、俺に視線を向けた。

こん時の顔は眉間に皺がよるねんな。

ほんまにわかりやすい。


「会社も辞めさせて、一緒に立ち上げさせて、今は半同棲みたいなもんやから。挨拶しとかなあかんなって思ったんや。今さらやけどな」


「そういうことなら、先にそれを言うてから訊いてや。いつもいつも……ほんまに」


そう言いつつも、親に聞いとくわ!

よろしくな。
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