これを運命というのなら

story:4

そんな日から時は過ぎて、陽希さんと私が出会ってから5年が経ったある日――。


「夜分にすいません。伊藤様がエントランスで倒れていまして、彼女さんを呼んでほしいと仰ってるので迎えに来て頂けませんか?」


深夜3時半。

スマホが鳴って、何も確認せずに出るとコンシェルジュの方からで。

朦朧としている中で、聞いた内容で……理解が追いつかないながらも、わかりました、と答えてから数十分後に理解して。

慌ててエントランスに向かうと、すいません、とコンシェルジュの方が付き添ってくれていた。


帰るよ、と。

コンシェルジュの方に、お礼の後に陽希さんの傍に行くと。

いつもの陽希さんのではない香水の香りが鼻を掠めたけれど、今はそれどころではなく。

綾乃?と、立ち上がってくれたフラフラの陽希さんを支えて部屋まで上がってすぐに。

陽希さんは、リビングの一角6畳の和室に寝転がってしまって。

風邪引くで?

声を掛けても、んー、としか言わない。

飲みすぎたんかと思って、水を持って来て起き上がらせて渡すと――その水を一気に飲んで。


「……めっちゃ眠くて……急に睡魔に襲われて……酒はそんなに飲んだ記憶ないんやけどな……で……気ぃついたら……隣に玲ちゃん居て……ジャケット脱がされてて……ネクタイ外されてて……ワイシャツのボタン外されてて……ヤバいって思って逃げてきた……」


どおりで、ネクタイもしてなければジャケットも着てないわけで。

インナーのTシャツにワイシャツを羽織ってる状態になってるわけね。
< 41 / 42 >

この作品をシェア

pagetop