可愛い番犬を育成したつもりがどうやら狼だった件~だけどやっぱり私の犬はとっても可愛い~
 他の人にヴラスタ伯爵家のエリシュカが二十歳にもなって軽食を食べさせて貰っている、ということはバレなくても、目の前にいるジェイクには全てバレているのだと思うと途端に恥ずかしくなってくる。
 じわりと熱くなった顔は仮面のお陰で気付かれないだろうが、二口目を食べる勇気は出そうになかった。

「こちらのも召し上がられますか?」
「い、いらないわ」
「ではこっちのゼリーはいかがでしょう」
「それも、その……いらない」

 私が首を振って断ると、少し残念そうにジェイクが顔を伏せる。
 あるはずのない耳と尻尾が下がったように見えてズキリと良心が痛んだ私は、彼から軽食の乗ったお皿を奪い口を開いた。

「こ、今度は私が食べさせてあげるわ!」

 私ばかりが恥ずかしい思いをしているのはなんだか不公平に感じ、彼がしたように一口サイズに切ったケーキをフォークに刺して彼の口元へと差し出す。
 仮面がジェイクの表情を隠しているので見えてはいないが、きっと今頃驚き恥ずかしがっているだろう。
 そう、思ったのだが。

「これは光栄ですね」
「えっ」
「ふふ、お気づきですか? 間接キスですよ」
「なっ!」
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