夜咲く花は愛を語る彼を照らす
 嫌いな人とデートになんて行かないのはわかってる。だけど、まだ告白もされてなくて、今はお試し期間みたいなものだと思うし。

 前の彼女には浮気されて捨てられたと聞いた。

 だから、恋には消極的らしいよ、と最初に友達に説明された。

 だから私たちはまだ、友達みたいなポジションだ。

 もしかして未練があるのかな。だったら私とはつきあってもらえない、片思いで終わるかもしれない。

「浴衣、きれいだね」
 彼が褒めてくれて、私は嬉しくなった。

「ありがとう」
 良かった、練習したかいがあった!

「俺も浴衣にしたら良かったかな」
 通り過ぎる浴衣のカップルを見て、彼が言う。

 きっとセクシーで、私は惚れ直しちゃうんだろうな。

「じゃ、行こうか」
 言って、彼が手を差し出す。

 私ははっとして、おずおずとその手を握った。

 彼がぎゅっと手を握り返すから、その力強さに胸がどきんと鳴った。





 下駄が歩きづらいけど、彼は私に合わせて歩いてくれている。

 こういう優しいところに、私はどんどん惹かれている。

 花火を見に行くこと自体が久しぶりで、期待は高まる一方だ。

 自販機で飲み物を買って会場につくと、もうすでに人はいっぱいいた。
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