夜咲く花は愛を語る彼を照らす
「なんで連絡をブロックしてるの?」
 彼女が彼に聞く。

「もう連絡とりたくないから」
 彼の言葉に、私は驚いた。

 そんなはっきり言う人、初めて見た。

「私、あのときの人と別れたんだ。だから今、彼氏いないの」
 彼女が上目遣いで言う。

 ああ、と私は悟った。浮気されて別れたという恋人が、彼女なのだろう。

「また会おうよ、今なら間違えないから。私に未練があって新カノ作ってないんでしょ」
 にこっと彼女は笑う。

 私はごくりとつばを飲み込んだ。

 彼女の笑顔はとても魅力的だ。男性なら誰でも見とれるだろう。

 平々凡々な私より、断然、彼女を恋人にしたいと思うはずだ。

 彼女は自分が魅力的なのをわかっているんだろう。だから私ごときは敵じゃない、だから私の眼の前でこんなことが言えるんだろうな。

 そもそも私は恋人じゃないし。

 しょんぼりとうつむいていると、肩をぐっと抱かれて私は驚いた。

「俺、彼女とつきあってるから無理」

 どーん!

 大きな音がして、ぱらぱらと小さな音が続く。

 花火が始まったのだ、と気付いたけど、私はそれどころじゃない。
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