夜咲く花は愛を語る彼を照らす
「はあ? そんな女と?」
 彼女はけげんそうに私を見る。

「俺、あなたのそういうところ無理だから。人を見下して悪口ばっかり。どうやって別れようかと思っていたときに浮気してくれて、ありがたかったよ。新カノを作らなかつたのは未練じゃなくて仕事が忙しかっただけたから」

 私は唖然として彼を見た。

 彼は私の視線に気がつくと、にこっと笑みを返してくれた。

 それからきりっと彼女に向き直る。
「だからもう二度と俺に声をかけないでくれ」

 彼女はぎりっと私をにらみ、それからふん、と顔をそらした。

「私だって、あんたみたいな偽善者、無理だから!」
 言い捨てて、彼女は足早に去っていった。





 私達はそれから、空いているところに陣取って花火を見た。

 空に上がる光の花は美しくて、周囲からは歓声が上がる。

 だけど、私は上の空だった。

 つきあってるって言われた。

 きっと彼女を撃退するために言っただけだ。わかってる。

 だけど。

 私はどきどきしてしまって、落ち着かない。
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