狂気のサクラ
近藤が到着したのは30分ほど経過してからだった。店員に案内され個室に現れた近藤は、迷うことなく私の隣へ座った。そこしか空席がないのだから当然だ。いつものワックスの匂いがする。
「ごめん、遅くなった」
おしぼりで手を拭きながら近藤は申し訳なさそうに言った。
運ばれてきた料理を1時間程で平らげ、店員が空いた皿を下げにきた。その直後、急に照明が落ち、定番のバースディソングが流れ始めた。予想はしていなかったけれど、私に向けられているとすぐに分かった。
失礼します、と店員がドアを開けると、ぱちぱちと火花を散らしたケーキが見えた。ケーキの上に1本、花火が立っている。
『りん たんじょうびおめでとう』
クッキーにきっとチョコレートで書かれている。
「おめでとう」
さゆりがそう言い、北川と近藤、そして初対面の若い男性店員も続けて言った。とても面映かったが嬉しかった。
「お預かりしていたお荷物です」
店員は大きめの紙袋をドアの前に置いて下がっていった。いつの間に預けていたのだろう。さゆりは袋をごそごそ探り、小さめの包みと筒のようなものを取り出した。
「はい、プレゼント」
そう言ってそのふたつを机上に置いた。音楽も止まり部屋の照明も戻っていたけれど花火はまだ燃えていた。
「ありがとう」
筒状でリボンがかかっているのは毎年恒例になっているカレンダーだと想像できた。水色の包装紙で包まれている方は少しずっしりしている。
「ごめん、遅くなった」
おしぼりで手を拭きながら近藤は申し訳なさそうに言った。
運ばれてきた料理を1時間程で平らげ、店員が空いた皿を下げにきた。その直後、急に照明が落ち、定番のバースディソングが流れ始めた。予想はしていなかったけれど、私に向けられているとすぐに分かった。
失礼します、と店員がドアを開けると、ぱちぱちと火花を散らしたケーキが見えた。ケーキの上に1本、花火が立っている。
『りん たんじょうびおめでとう』
クッキーにきっとチョコレートで書かれている。
「おめでとう」
さゆりがそう言い、北川と近藤、そして初対面の若い男性店員も続けて言った。とても面映かったが嬉しかった。
「お預かりしていたお荷物です」
店員は大きめの紙袋をドアの前に置いて下がっていった。いつの間に預けていたのだろう。さゆりは袋をごそごそ探り、小さめの包みと筒のようなものを取り出した。
「はい、プレゼント」
そう言ってそのふたつを机上に置いた。音楽も止まり部屋の照明も戻っていたけれど花火はまだ燃えていた。
「ありがとう」
筒状でリボンがかかっているのは毎年恒例になっているカレンダーだと想像できた。水色の包装紙で包まれている方は少しずっしりしている。