黒色無双
「黒っ……」
「は?」
雰囲気が真っ黒すぎて思わず声が漏れた。
この人に似合う色は絶対黒だな、ってひと目見て確信するくらい、黒。
別に肌が黒いとか物理的な話じゃなくて、オーラみたいな。
しかも顔面国宝。
噂のイケメンって絶対この人。
整いすぎた顔のパーツに、きれいな輪郭、さらさらな黒髪に、高い身長。
名前はなんだろうと思って名札を見た。
「桶川……」
あたしは、隣の席の子の名前が頭に浮かんだ。
桶川悠佑ちゃん。
でも、同じ苗字だっただけかもしれない。
「あの、名前なんて言うんですか……?」
こんな初対面でいきなり名前聞いてくるとかキモい、って思われるかもしれない。
でも、それ以上に気になることがあった。
「先にそっちが言うべきじゃない?」
にやりと不敵な笑みを浮かべた。
心臓をつらぬいてくる感覚がした。
「清水美嘉です」
「清水美嘉、ね。俺は桶川悠佑。これからよろしく」
そう言ってあたしの横を通り過ぎていった。
これから、ってなんだろう。
「桶川悠佑……」
あたしはしばらく、その場から動けずにいた。