黒色無双



「黒っ……」


「は?」


雰囲気が真っ黒すぎて思わず声が漏れた。


この人に似合う色は絶対黒だな、ってひと目見て確信するくらい、黒。


別に肌が黒いとか物理的な話じゃなくて、オーラみたいな。


しかも顔面国宝。


噂のイケメンって絶対この人。



整いすぎた顔のパーツに、きれいな輪郭、さらさらな黒髪に、高い身長。



名前はなんだろうと思って名札を見た。



「桶川……」


あたしは、隣の席の子の名前が頭に浮かんだ。


桶川悠佑ちゃん。



でも、同じ苗字だっただけかもしれない。


「あの、名前なんて言うんですか……?」


こんな初対面でいきなり名前聞いてくるとかキモい、って思われるかもしれない。


でも、それ以上に気になることがあった。



「先にそっちが言うべきじゃない?」


にやりと不敵な笑みを浮かべた。


心臓をつらぬいてくる感覚がした。


「清水美嘉です」


「清水美嘉、ね。俺は桶川悠佑。これからよろしく」


そう言ってあたしの横を通り過ぎていった。


これから、ってなんだろう。


「桶川悠佑……」


あたしはしばらく、その場から動けずにいた。




< 17 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop