天才と呼ばれた彼女は無理やり入れられた後宮で怠惰に過ごしたい!①

希望の光は強烈に刺す

「もう一度聞く、お前が犯人だな?」

 弱々しく、私は首を横に振る。苛立つ警備兵。尋問の時間を繰り返される。まるで犯人に仕立て上げたいとばかりに執拗に。

「強情な娘だな!」

「お嬢様は本当になにもしてないのです!お許しください!」

 アナベルが涙ながらに訴える。

「あのなぁ?そのままだと死ぬぞ。まあ、死人に口ナシでいいか」
  
 腐ってるわ……と私は相手を睨みつける。その目が気に入らなかったらしい。グッと髪を掴まれる。

「なんだ?その目?」
 
 バシッと音がするほど強く頬を叩かれ床に倒れた。口の中が切れたらしく血の味が滲んだ。

「お嬢様ーーーっ!!」

 悲鳴の様な声をあげるアナベル。うるさい!と蹴飛ばされてアナベルも倒れた。

 ……くっ……こんな魔力を封じる牢。全力で吹き飛ばしてやりたい。今、殴ったやつも一緒に巻き込んで吹っ飛ばしてやりたいっ!でも……でもっ……ここでそこまでしたら、本当に罪人になってしまう。

 失いそうな意識の中で、どうにか私は正気を保とうとした。

 その時だった。

「リアン!リアーーーン!!」

 地下牢に私の名を呼ぶ声が響いた。懐かしい声。助かった……かな?時間の計算ピッタリだったかな?と考えたところで、力の入らない私の体は床に落ちまま沈むように横たわったままだ。

 ガシャンと鉄格子が鳴った。その瞬間、私を殴った男が吹っ飛んだ……え?

「おまえ……何してんだ?《《オレ》》のリアンに何をした!?」

 オレ?って……あれ?ウィルじゃなかったっけ?声音も口調もまったく違う。うっすら目を開けてみる。視界がはっきりしない。

「ぐわっ!」

 悲鳴をあげ、男が鈍い音と共に地面に伏した。……な、なにが起こってるの?

「大丈夫か!?リアン!?」

 抱きかかえてくれたのは……やはりウィルのような気がした。ウィルの匂いがするからだ。ホッとした。

「《《陛下》》!地下牢で何を……これは!?」

 ザワザワと人が集まってきた気配。あれっ?今?陛下?って言った?空耳……かな。

「今すぐ、後宮の女全員を捕らえろ!魔道士、騎士団、衛兵すべて集めよ!よくも、よくも……オレのものに手を出したな!思い知らせてやろう。それがどんなことになるのか!」

「落ち着いてください!」

 誰かがそう言うが、私を抱えた人物の怒りは激しく、黙れ!と叫び、指示をした。

「今すぐ、本物の罪人をとらえる!さっさと行け!行動を起こせ!」

 ……うん。ウィルじゃないわ。だって、ウィルはこんな性格ではない。じゃあ……誰?私はそう謎に思いながらも目を開けていられず、意識を落としてしまったのだった。
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