天才と呼ばれた彼女は無理やり入れられた後宮で怠惰に過ごしたい!①
贈り物で平穏な日々を掴め
しばらく経つと、後宮の力関係が生まれ、派閥ができてきた。人間って集団になるとこうなるのよねぇとしみじみ思う。
「お嬢様は呑気すぎませんか?大丈夫ですか?」
「私は無所属無派閥でいたいわ。関わりたくないわ。でもそれって目をつけられやすいのよね」
私は嫌がらせされると対応するのがめんどくさいしという理由で、策を練ることにした。
……うん。とりあえず最大派閥の人に私は無害ですからとアピールしておこう。最適なのは、後宮で一番勢いのあるワイアット公爵令嬢ね。
お父様に頼んで、花の香りのするお香を手に入れた。
「あら?今日は、いらしてくれたの?……えーと、クラーノ男爵令嬢だったかしら?」
クラークです。名前を間違えられ、うろ覚えになるほどの名モブっぷりの自分に拍手したい。第一候補と名高いワイアット公爵令嬢のシエラ様のお茶会に来た。
いつもは昼寝タイムなんだけどなーという午後の眠い時間。
「シエラ様にいつもお誘い頂いているのに、私は体が弱くて、なかなか出席できず、申しわけありません」
病弱設定が最近、私のブーム。なにかと理由つけて断りやすく使いやすい。
「まぁ……おかわいそうに。それではなかなか陛下とのパーティーにも参加しにくいですわね。ホホホ」
要はそんな病弱なら、参加しなくてけっこうよと意味を込められている返答。参加するつもりがないから大丈夫ですと心の中で思いつつ、従順にハイと返事をしておく。
お茶会では私も時々ハイとかソウデスネなど言いつつ、当たり障りなく終わっていく。帰り際に、私はこれを受け取ってくださいとシエラ様に渡す。
「まあ!!これは……わたくしのお気に入りのお香!?どうしてわかりましたの!?」
「シエラ様の領地ではお花の栽培が盛んな地域でございます。その花々の中でも、人気の香りものでございます。だからお好きではないか?と」
シエラ様は頬を薔薇色に染めて喜ばれる。そろそろホームシックにもなるころであろうから、自分の故郷を匂わせるものが喜ばれるだろうと思ったのだが、ピッタリハマったようだ。
「ありがとう。クラーク男爵令嬢、故郷を感じられて、本当に嬉しいですわ!」
これで名前を覚えて頂いた。部屋へ帰るまで大人しくしていた私は自室の扉をくぐった瞬間、表情を崩し、ニヤッとした。
「うわ!悪い笑みを浮かべないでください!お嬢様っ!!」
アナベルが非難する。私は手袋、扇をテーブルに置いて、頬杖をつく。
「これで当面のところ、大丈夫ね。自分の安全地帯は確保しておかなきゃね。怠惰ゆえの怠惰に過ごすための怠惰人による策。完璧よっ!」
「悪どい!悪どすぎます!あの贈り物も計算済みだったんでしょう!?頭脳の無駄遣いですよ!」
アナベルがドン引きしている。
「有効活用してるでしょ。さーて、平和を約束されたようなものだし、病弱な私は読書っと」
ドレスをポイッと脱ぎ捨てて、簡易な服装にさっさと着替えた。
「3食をきっかり召し上がっている元気いーーっぱいのお嬢様、なにが病弱なんですかっ!」
ブツブツ言いながら、ドレスを片付けるアナベル。彼女にしてみたら、自分のつかえる主人が王妃候補の中でも一番であれば、どんなに鼻が高いか……申しわけなくなる。
でもアナベルは優しかった。わかっているのだ。私がここに来たのは本意ではないと。お嬢様がかわいそうです!と両親に言ってくれていた。……ごめんね。そしてありがとう。
「お嬢様は呑気すぎませんか?大丈夫ですか?」
「私は無所属無派閥でいたいわ。関わりたくないわ。でもそれって目をつけられやすいのよね」
私は嫌がらせされると対応するのがめんどくさいしという理由で、策を練ることにした。
……うん。とりあえず最大派閥の人に私は無害ですからとアピールしておこう。最適なのは、後宮で一番勢いのあるワイアット公爵令嬢ね。
お父様に頼んで、花の香りのするお香を手に入れた。
「あら?今日は、いらしてくれたの?……えーと、クラーノ男爵令嬢だったかしら?」
クラークです。名前を間違えられ、うろ覚えになるほどの名モブっぷりの自分に拍手したい。第一候補と名高いワイアット公爵令嬢のシエラ様のお茶会に来た。
いつもは昼寝タイムなんだけどなーという午後の眠い時間。
「シエラ様にいつもお誘い頂いているのに、私は体が弱くて、なかなか出席できず、申しわけありません」
病弱設定が最近、私のブーム。なにかと理由つけて断りやすく使いやすい。
「まぁ……おかわいそうに。それではなかなか陛下とのパーティーにも参加しにくいですわね。ホホホ」
要はそんな病弱なら、参加しなくてけっこうよと意味を込められている返答。参加するつもりがないから大丈夫ですと心の中で思いつつ、従順にハイと返事をしておく。
お茶会では私も時々ハイとかソウデスネなど言いつつ、当たり障りなく終わっていく。帰り際に、私はこれを受け取ってくださいとシエラ様に渡す。
「まあ!!これは……わたくしのお気に入りのお香!?どうしてわかりましたの!?」
「シエラ様の領地ではお花の栽培が盛んな地域でございます。その花々の中でも、人気の香りものでございます。だからお好きではないか?と」
シエラ様は頬を薔薇色に染めて喜ばれる。そろそろホームシックにもなるころであろうから、自分の故郷を匂わせるものが喜ばれるだろうと思ったのだが、ピッタリハマったようだ。
「ありがとう。クラーク男爵令嬢、故郷を感じられて、本当に嬉しいですわ!」
これで名前を覚えて頂いた。部屋へ帰るまで大人しくしていた私は自室の扉をくぐった瞬間、表情を崩し、ニヤッとした。
「うわ!悪い笑みを浮かべないでください!お嬢様っ!!」
アナベルが非難する。私は手袋、扇をテーブルに置いて、頬杖をつく。
「これで当面のところ、大丈夫ね。自分の安全地帯は確保しておかなきゃね。怠惰ゆえの怠惰に過ごすための怠惰人による策。完璧よっ!」
「悪どい!悪どすぎます!あの贈り物も計算済みだったんでしょう!?頭脳の無駄遣いですよ!」
アナベルがドン引きしている。
「有効活用してるでしょ。さーて、平和を約束されたようなものだし、病弱な私は読書っと」
ドレスをポイッと脱ぎ捨てて、簡易な服装にさっさと着替えた。
「3食をきっかり召し上がっている元気いーーっぱいのお嬢様、なにが病弱なんですかっ!」
ブツブツ言いながら、ドレスを片付けるアナベル。彼女にしてみたら、自分のつかえる主人が王妃候補の中でも一番であれば、どんなに鼻が高いか……申しわけなくなる。
でもアナベルは優しかった。わかっているのだ。私がここに来たのは本意ではないと。お嬢様がかわいそうです!と両親に言ってくれていた。……ごめんね。そしてありがとう。