末っ子の公爵令嬢の私が騎士団長と婚約した
私、アリシア・レッドフォードは公爵令嬢の末っ子として生まれた。

上には二人の兄と三人の姉がおり、両親にも愛情を注がれてなに不自由なく育った。

上の兄弟たちはみな、何かしらの優れているところがあった。

一番上の長男は、剣の才能があった。

学園に通っていた頃は、剣術の大会で優勝している。

二番目の長女は、魔法の才能。

学園の魔法の授業では、教師も舌を巻くほどの高度の魔法を使いこなしていた。

 三番目の兄は勉学。

特に理数系の教科においては群を抜いていた。

四番目の姉は、音楽の才能。

雇っている音楽の先生は、もう教えることは何もないと言っていたほどだ。

五番目の姉は薬学に精通していた。

将来は宮廷の専属医として迎え入れたいと、話がきているほどだ。

そして、末っ子の私。

外見も内面もパッとせず、16年間を過ごしてきた。

この国の女性は、16歳になると成人として扱われ、貴族に生まれた令嬢たちは社交界に出席することが認められる。

そして、その場で婚約者を探すのだ。


「アリシア、お前も16、社交界に出席ができる」

お父様が何を言いたいかは予想がついた。

なんの取り柄もないお前はせめて、いい婚約者を見つけろ、顔に書いてある。

「わかっています、お父様。私はもう婚約者をを見つけて嫁ぐ以外何もできません」

「いや…そこまでは…」

そこまでは思っていない、と言いたげだ。

お父様の顔に困惑の色が浮かぶ。

「構いません。不出来な私にできることはこれくらいしかありませんから」

今まで、上の優秀な兄や姉たちと比べられ悔しい思いをしてきた。

「アリシア、実はお前に縁談の話がきているんだ」

「縁談?」

驚いた。

自分などに縁談の話がくるとは夢にも思わなかった。

「お相手はどんな方ですか?」

「それが…」

お父様が言葉に詰まっている。

「失礼いたします」

その時、ドアが開いた。

「父上、お連れしました」

「ああ、きたか。お通ししろ」

客人だろうか?

入ってきたのは、兄が所属している騎士団の団長を務めているローラン様だ。

「ご無沙汰しております。公爵」

「いいえ。どうぞ、お座りください」

「お父様、何かお話があるのなら、私は席を外します。お話が終わったら、お声をかけてください」

「いや、今から話すのはお前のことに関してだ」

「え?」

「お前も私の隣に座れ。アイル、案内ご苦労。お前は下がっていい」

アイルお兄様が一礼して部屋を出て行った。

お父様が咳払いをしたあと話し始めた。

「アリシア、この方がお前に縁談を申し込んできた騎士団長のローラン・ブルーアー様だ」
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