末っ子の公爵令嬢の私が騎士団長と婚約した
その時、私はドレスに足を引っ掛けてしまった。

「きゃ…っ」

転びそうになった時、ローラン様が支えてくれた。

「大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。申し訳ありません」

「少し疲れましたね。休みましょう」


私たちは、今日泊まる予定の部屋で休んだ。

舞踏会に出席するものたちには、部屋が用意されるのだ。

「ところで…なぜ同じ部屋なのでしょう?」

私はローラン様と同室だった。

「それは私たちは婚約したのですから、同じ部屋でも不思議ではありません」

それもそうか…

部屋の中は、とても広かった。

「ずいぶん豪華な部屋ですね」

「陛下のご厚意だそうです。せっかく参加してくれたのだからと」

ここの国王陛下は、とても心優しいお方だ。

貧民街の問題にもきちんと目を向けて解決策を立てているし、お金がなくて学園に入れない子がいれば、学費免除をしてくれたらしい。

「ほんとうに、陛下には頭が上がりません。私も貧しい家に生まれましたが、剣の腕を買われて、リリア様の専属騎士として仕事をくださいました」

「え?あなたは貴族の息子だったのでは?」

「確かに私は貴族の家のものです。ですが、私は分家でそれほどいい暮らしはできませんでした」
 
ローラン様にそんな過去があったなんて知らなかった。

「リリア様も従者である私にとても優しく察してくださいました」

そう話すローラン様の顔はとても優しかった。

「ローラン様はリリア様のことを愛していましたか?」

ローラン様は目を見開いた。

「私があの方にそのような感情を持つことは許されません。あの方は王女であり、私はその従者です。もし関係など待てば、私は死刑になるでしょうね」

「もし、許されていたらどうですか?」

「いきなりどうされたのですか?」

ローラン様は戸惑いの色を見せた。

「以前、噂で聞いたことがあります。あなたと王女様が恋仲だと」

それを聞いたローラン様は笑い出した。

「それは、ご令嬢方がそう噂していたのですか?」

「はい」

「年頃の女性は、色恋沙汰に敏感なのですね。今もお伝えしたように、それが事実ならば、私は今ここにはいません」

私は自分の聞いたことが急に恥ずかしくなってきた。

「もしかして、それが心配だったのですか?」

「いえ、ただ少し、気になったものですから」

ローラン様は、私の頬にそっと手を添えた。

「あなたはこれから、私の妻になるのですから、夫になる私が不安にさせるようではいけませんね」

そういうと、私の唇を奪った。

「政略結婚とはいえど、結婚する女性には幸せにすると決めていますから。あなたの不安は取り除きますよ」

私は、ひどい思い込みをしていた。

噂だけを鵜呑みにして、この人はそう言う人なのだと決めつけていた。

そして自分の浅はかさに嫌気が刺した。

「申し訳ありません。私はずっと、あなたはしかたなく私と結婚するものだと思っていました。家同士の繋がりを強くするためだと」
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