見習い料理研究家は甘党消防士に捕獲されました。
「……あ、救急車」

 サイレンは鳴らしていないし、もしかしたら戻ってきたのかもしれない。

 この付近には消防署があるから、そこに戻るんだろうなぁって。

「暑いのに大変そう。……私には、出来ないや」

 少し前に消防署の仕事の特集がテレビで組んであったけれど、私には絶対にできないって思った。

 ……私の頭の中は料理のことばっかり。

 その所為で青春みたいなことも二の次だったし、恋人なんていたこともない。

「そろそろ真面目に将来のこと、考えなくちゃなぁ……」

 ぽつりとそう零す。

 このまま夢を追い続けていて、いいのだろうか。

 頭の中に浮かんだネガティブな考えを、振り払う。

「二十八歳まではきちんと頑張るって決めた。……それからは、そのときよ」

 つい先日二十六歳になった私は、このままではダメだと夢を追う期限を決めた。

 それこそ、今から二年後。二十八歳の誕生日。

 ……そのときまでに、私は料理研究家として一人前になる。それが無理だったら……もう、夢を追うのは諦めよう。

 そう、思っていた。
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