見習い料理研究家は甘党消防士に捕獲されました。
「そう思っても、やっぱりやめられないの。そのたびに好きって実感しちゃって……」

 言葉にすると余計にわかる。私は料理が好きだって。本気で夢を追いかけてるんだって。

 才能がないことはわかってる。それでも……やっぱり、そう簡単に諦められる夢じゃない。

「ご、ごめんね、私のほうが辛くなっちゃって……」

 目頭を押さえてこみあげてきた涙を止めようとする。

 そんなときだった。不意に芽久さんが私を見つめた。

「……別に、料理は好きじゃないよ」

 芽久さんがそう言葉を発する。

「でも、覚えたいとは思うの。……作ってあげたい人がいるから」

 しっかりと私を見つめて、芽久さんがそう言った。

 ……上手い返しが、すぐには思いつかなかった。

「その人、すっごく大変そうなの。それなのに、私の前ではずっと笑顔」
「……うん」
「こっそりと泣いてるのも知ってる。苦しんでるのも知っている。それなのに、芽久は気にしなくていいよって、言うの」

 ぽつりぽつりと彼女が言葉を零す。

 ……どうして、なのだろうか。

 私には彼女の話が、他人事には思えなかった。
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