ごきげんよう

ふたりの愛娘


 不本意だが、親子鑑定の話に戻りたい。

 うちには2人の娘がいて、顔はどちらも私にそっくりだと言われる。
 上のハルカは運動も勉強も得意でハキハキとしているが、ナツキはどちらも苦手で、よく言えばおっとり、悪く言えばぼんやりしている。

 夫は機嫌のいいときは「2人とも、ママそっくりの美人になるぞ」と頭を撫でるが、そうでないときは、ナツキの小さな落ち度を、泣き出すレベルで責め立てることも珍しくない。

 私は例の「元カレ」とは、誓って20年会っていないし、似ているというのも思い込みだ。
 というよりも、1年付き合った私自身が彼の顔をろくに覚えていなかったのに、ちらっと小さな写真を見ただけの彼に、似ているかどうかの判断などできるものか。

 親子鑑定と言うなら、ハルカにも同じことをしなければフェアでないと思うのだが、彼には「出来のいいハルカは自分の子供だから調べる必要がない」という大前提があるようだ。

 もっとも、あのときたまたま安い鑑定キットなら試してもいいという心境になっただけで、その気持ちが持続することはない。単に自分が納得する理屈で私の浮気を“疑いたい”だけだ。真意は分からないが、そういう人なのである。
 断言してもいいが、今朝の提案は、多分1カ月もしないうちにケロリと忘れているだろう。そういう人(略)。

 そしてその1カ月の間にも、外で女を抱き、安っぽい工作をし、家では私に暴言を吐き、暴力を振るうだろう。

 さすがにそろそろタイムアップである。
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