恋人時代 コーヒーカップに映った君へ
 由美子も涼子と同じように小さい頃から一緒に遊んでいた。 それがまさか結婚するなんて、、、。
「姉ちゃんが結んでくれたのよ。」 由美子はいつも俺にそう言った。 涼子とは違ってどこか内向的な女だった。
陰気臭いとかいうわけじゃないんだけどな。 涼子は活発な女で誰とでも仲良くなり、海へ山へ毎週出掛けるようなやつだったんだ。
 そんな涼子が自殺した日、由美子も死ぬんだって聞かなかった。 それをなんとか宥め空かして付き合ってたんだ。
いつか、俺と由美子は恋仲になった。 そして駆け落ち同然で同棲した。

 そこでも由美子は涼子の写真を肌身離さずに持ち歩いていたっけな。
夕食を作ると涼子の写真の前に皿を置いて「姉ちゃんも食べようね。」って手を合わせてたんだ。
 俺が風邪をひいた時には「姉ちゃんのことを忘れるからそうなるのよ。」って口を尖らせてたっけなあ。
そんな由美子が「別れたい。」って言ってきたのは2年前のことだった。 驚きはしたけど(そんなことも有るんだろうな。)って思ったから離婚届にもサインした。
 由美子が出て行った後、この部屋には誰も来なかった。 友達すら来なくなったんだ。
まあ、そうだよな。 友達をよく呼んでたのは由美子なんだから。

 コーヒーを飲んでいると涼子のことも鮮やかに思い出す。 中学生の時は生徒会長もやってたんだ。
特にはみ出すようなことも無くて真面目な人だった。 シンボルは眼鏡だったなあ。
ポニーテールが似合う人でね、それがまたさり気なく決めてくるんだ。 いつもドキドキしてたよ。
 小学生の頃には何とも思わなかったのにね。
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