恋人時代 コーヒーカップに映った君へ
 涼子はね、1年先輩で由美子は1年後輩だった。
だから由美子が小学校に入学した時から三人でいつも並んで登校してたんだよ。 「アヒルの兄妹みたいだね。」って親たちには笑われてた。
 信号で立ってる緑のおばさんにも「今日も三人仲良しだねえ。」って言われてたもんだよ。
俺は黒のランドセル、涼子と由美子は赤のランドセル。 俺たちの頃は赤と黒しか無かったからね。
 由美子はまだまだ小さかったからランドセルが歩いてるみたいだった。 重そうにしてたからさ、いつも俺が支えてたんだ。
そんな由美子が4年生になった時、俺たちは初めてリレーに出た。 そうそう、由美子からバトンを受けて涼子に渡すんだ。
ところがさ、何が有ったのか、俺が緊張しちゃって受けるのも渡すのも失敗しちゃってさあ、、、。
それで白組が負けたもんだからみんなに死にたくなるくらいの文句を言われたなあ。
しょうがないだろう、そんな時も有ったんだから。

 ぼんやりと椅子に座ってコーヒーを飲んでいる。 今、由美子はどうしているのかな?
涼子が生きていたら今頃は子供も一緒になって海に行ってたのかなあ。 いろんなことを思うね。
 誰か客が入ってきた。 マスターの馴染みらしい。
俺は金を払って店を出ることにした。
 喫茶店からグルリと回って我が家に帰ってくる。
帰ってくると居間のテーブルに落ち着いてまたコーヒーを飲む。 何杯飲んでるんだろう?
 喫茶店の向こう側には山が在る。 登ったことは無いけれど。
高校の時だったかな、遠足のコースで山の近くまで行ったことが有る。 それくらいかな?
 ぼんやりするのももったいないから適当に買ってきたプラモデルを出してみる。 飛行機らしい。
全日空のマークが入ってるね。 銀行マンだった頃、出張でよくお世話になったよ。
 飛行機と言えば思い出すのは日航機の墜落事故。 本当は誤爆による事故なんだけどね。
自衛隊のミスを隠すためにボーイングに責任を負わせてしまったあの事故、、、。
だからかな、アメリカはボーイングの機体を買い進めるように圧力を掛けてきた。 どっちもどっちだね。
 しかもさ、山はそんなに焼けてないのに遺体は焼け焦げてたって話も有るよね。 相模湾には今も証拠品が沈んでいるらしい。
おそらくは原型を失うまで引き上げられることは無いだろう。 どいつもこいつも汚いよ。
 庶民が隠し事をすれば徹底的に洗い出すのにねえ。 困った国だよ。
本当の民主国家には当分なれないな。 残念だけどさ。
今の政治屋を全て追放し尽くしてからじゃないと無理だね。

 夕方になると幾分か涼しい風が吹き込んでくる。 そうすると今度は肉を焼いて飲むんだ。
由美子が居た頃は付き合いで飲みに行くことが多くてさ、寂しい思いをさせたね。
 融資の相手だとか大口の投資の話だとか、一般人にはほぼほぼ無縁な客ばかりを相手してたんだ。 面食らったことだって有るよ。
そりゃあ、価格破壊の時代だったからね。 うまくいかなくて倒産した銀行も有るくらいだから大変だったよ。
 そんな銀行をハタと辞めちまって今は呑気なユーチューバー暮らし。 退職金も少しは有るから気を休めるつもりでのんびりしてるんだ。
毎日毎日 金に追い回されていた自分が苦労も何もしない生活をしてるなんてどうなのかな?
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop