雨ふらしの公女は花の王子と恋をする
episode.08 雨ふらしの公女を呼んだ理由②
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慌てて支度を済ませ、エーデルが待つダイニングへと小走りで向かうと、彼はきのうと同じ顔で微笑んで出迎えた。
「ごめんね、急に」
「お待たせしてしまい申し訳ございません。公務は午前中で終わりだったのですか?」
「いや、午前中の仕事が早めに終わったから、いったん城に帰ってきたんだ。このあともまた外に出なければならないんだけど、その前にウララ嬢の顔を見ておきたくて」
エーデルはそう言って、あの華やかな笑顔をこぼした。それは紛れもなくウララに向けられている。
座ろうか、と言われ、ウララはエーデルの正面に着席した。
広いダイニングルームで、二人きりで昼食をとる。食事の合間に振られる世間話は、どれも取るに足らない雑談だった。
今日は暑くてまいったよ。今朝、虹がかかっていたんだ。部屋はどう? なにか気になることがあれば、僕でも使用人でも誰でもかまわないから遠慮なく言ってね。
ウララが自分からなにか話す様子を見せないからか、エーデルは世間話とウララへの気遣いを交互に混ぜこんで、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
ウララは適当に相槌を打ちつつ、頭では違うことを考えていた。
――近いうちに話をしたいと言っていたけど、あれは今日ではないのかしら。わざわざ急いで王宮に戻ってきたのだから、なにか用があると思ったのだけど……
「ウララ嬢?」
「あ、失礼いたしました」
考えごとに夢中になっていたら、いつの間にか視線が手元のパンに落ちていた。ハッとして顔を上げると、澄んだ碧眼がウララを見つめていた。
ウララは意を決して口を開く。