雨ふらしの公女は花の王子と恋をする


「あの、一つ質問をしてもよろしいでしょうか」
「質問? なんでもどうぞ」
「私と婚約した理由を教えていただきたいのですが」
「えっ!? こ、婚約した理由……?」

 エーデルはそう言うと、盛大にむせた。
 
 ――聞き方がまずかったかしら。

 ウララはなにかまずいことを言ってしまったかと内心焦るものの、なにがまずかったのかわからないから下手に口を開くことができない。
 室内に静寂が訪れる。そんな気まずい空気を一掃したのは、窓の外で鳥が一斉に羽ばたいた音だった。驚いて窓を振り返ると、木々が揺れ、枝葉が舞い落ちていた。
 エーデルがまたむせる。
 視線をテーブルに戻したウララが思わず立ち上がろうとすると、エーデルに制止される。陶器のように白い彼の頬が、ほんのりと赤く染まっていた。
 彼は水を飲むと、ため息をついた。

「ごめん、見苦しいところを見せたね」
「いえ……」

 エーデルはこほんと咳払いすると、テーブルの上で手を組んだ。

「それで、ウララ嬢はどうしてそんな質問をするんだろうか」

 その瞳は相変わらず穏やかだが、ウララの真意を推し量らんとばかりに鋭く光っている。

「身に余る光栄でたいへん恐縮しているのですが、なぜ私のような『呪い持ち』の……しかも強力な呪いを持った令嬢をご指名されたのかおうかがいしたく思いまして。政治的にも、王家と我がエングー公爵家の関わりは薄かったはずだと記憶しております」

 ウララが最後まで言いきると、エーデルはまばたきを二、三してがっくりと肩を落とした。

「あ、うん……なんだ、そういうこと」

 はは、と乾いた笑いをこぼす。
 やはりエーデルが考えていることがわからず、ウララは不安に思う。
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