雨ふらしの公女は花の王子と恋をする

 考えごとをしていたの、とウララはそれらしい言い訳をして、シスを見る。

「きっと殿下にもまだ言えない理由があるんでしょうから、むやみな詮索はよくないわ」
「でも……」

 シスはそう言うと、エプロンの裾を掴んで黙り込んでしまった。シスは頑固だ。こうなったら自分が納得するまでは、ずっと「でも」「だって」を繰り返すということをウララは知っている。

「ねえ、シス。わたし、気分転換にお城を探索したいわ。着いてきてくれる?」

 はいと返事をしたシスの目は、いたずらっ子のように輝いていた。ウララはまずい、と思う。

「お嬢さま、せっかくだから偵察しましょうよ」
「偵察?」
「はい。王城のなかはどこに行ってもいいってお許しをいただいたんですよね。使用人たちや殿下と働いている人に、殿下のことをいろいろ聞いてみればいいんです」
「それはちょっとはしたないんじゃ……」
「だって! このままじゃお嬢さまのことがないがしろにされているようで納得できないんです!」

 こうなったシスは誰にも止められない。ウララは諦め気味に「わかったわ」と言った。

「でも、くれぐれも殿下やみなさまの失礼にならないようにしましょうね」
「はい!」
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