雨ふらしの公女は花の王子と恋をする
episode.10 日照りの村へ①
王宮に来てから一週間が経ったころ、ようやくウララに初めての仕事が舞い込んだ。
「ウララ嬢、あらためて確認させてもらいたい。雨ふらしの力を使うことで、気分が悪くなったり、生活に影響が出たりするようなことはないんだよね」
エーデルに呼ばれて執務室に向かうと、開口一番彼はそう言った。
「はい」
この一週間ずっと仕事が立て込んでいたそうで、朝食以外でろくに顔を合わせる機会がなかったから、エーデルとは久しぶりの対面になる。彼は今日も立派な衣装に身を包んでいたが、どことなく疲労の色が見えた。
「それならよかった。じゃあ、アイデン村に行って、雨をふらしてくれないか」
「アイデン村と言いますと、王宮から東の方角の村でしたでしょうか」
「そう、馬車で東に三十分くらいかな。村の面積は狭いものの、この国の農業の中枢を担っている。だが、ここ一か月ほど日照りが続いていて、作物に影響が出はじめているんだ」
先日、自分にできることならなんでもやると言ったものの、ウララはすぐには頷くことができなかった。自分が外に出ると雨が降ってしまう。そうすれば、父や兄たちのように、みな自分を蔑んだ目で見るのでは、と。
ちらりとエーデルをぬすみ見ると、目の下に薄らと隈ができていた。