雨ふらしの公女は花の王子と恋をする
「せっかくだから僕も一緒に出かけられたらと思ったんだけど、いやならいいんだ……まあ、そうだよね……いきなりの婚約だものね……一緒に馬車に乗ったり、隣で歩いたりするのは抵抗感あるよね……」
「あ、いいえ、殿下が雨に濡れてしまうと思いまして。でも、ご一緒していただけるなら心強いです」
そう言うと、エーデルは悲しげに微笑んだ。気遣ってもらったのに、失礼な言い方をしてしまったとウララは内心で反省する。
「それじゃあ、明日の昼前には出発するからよろしくね」
世間話もそこそこにエーデルは次の仕事へ向かった。
***
エーデルから説明があったとおり、アイデン村はフローラ王国における農作物の生産量のトップを誇る区。アイデン村でとられた種々の農産物は、国内の食糧をまかなうだけではなく、国外へも輸出されている。
面積は小規模なものの、村が担う役割は大きい。だからこそ、日照りで農作物の生長に影響が出はじめていることが大きな問題なのだ。
「いやー、それにしても今日も快晴だ」
ウララはいま、エーデルとともにアイデン村に向かう馬車に揺られていた。正面に座るエーデルは、カーテンを軽く持ち上げて窓の外を見て、「今日も暑いなぁ」などとつぶやいている。
「本当に暑いですね」
たしかに夏前にもかかわらず、連日、異常な暑さを誇っていた。薄手のワンピースを着ているが、じわりと背中に汗が伝う。