雨ふらしの公女は花の王子と恋をする

「晴れてよかったと言えたらいいんだけど、日照りのことを思うと無邪気に喜べないのが悲しいところだね。あ、窓開けようか?」
「ありがとうございます」

 エーデルが窓を開けると、心地よい風が通り抜ける。
 今日のエーデルは、シャツ一枚とかなりの軽装だった。馬車に乗るまではジャケットを着ていたが、早々に暑いと言って脱いでいた。シンプルな水色のシャツが彼の体格のよさを引き立たせている。
 腕まくりした袖から、しなやかな筋肉のついた腕がのぞく。いつも王宮で着飾った姿ばかり見ていたから、ウララは見慣れない姿を新鮮に思った。

 エーデルが言っていたとおり、三十分ほどでアイデン村に到着した。
 エーデルは先に馬車を降りると、待ち構えていた村人たちとしばらく話し込んでから、馬車に戻ってきた。

「さ、ウララ嬢、行こうか」

 差し出された手を取ろうとして右手を伸ばそうとするが、意思に反して体が強張って動かない。
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