雨ふらしの公女は花の王子と恋をする
episode.11 日照りの村へ②
エーデルの手の温もりを感じながら、アイデン村の大地に降り立つと、すぐに雨雲が空を覆った。
ウララはいますぐここから逃げ出さなければならないと思った。やはり自分は室内に閉じこもっているべきだ。父が言っていたように、人様に迷惑をかけてはならないのだから。すぐに帰らなければならない。
――でも、どこへ帰るというの。
青ざめたまま呆然と立ち尽くしていると、繋がれたままの手が少し強く握られた。顔を上げると、エーデルに「ごらん」と言われる。
気づくと、村人たちが地面にひれ伏していた。
「ようこそいらっしゃいました」
彼らは顔を上げずにそう言う。大人も子どもも老人も、みなウララたちに最大限の敬意を表していた。
すでに雨粒は地面に小さな円を描きはじめている。ウララとエーデルは屋根の下にいるからいいが、村の人々はこのままでは泥だらけになってしまう。
ウララは慌てて口を開いた。
「あの、どうか顔を上げてください。私のせいでごめんなさい……濡れてしまうわ」
震える声は雨粒に遮られ、彼らに届かなかったのだろうか。村人たちから返事はない。石のように地面から動きそうにない様子に戸惑っていると、隣に立つエーデルが鷹揚に言った。
「楽にしてかまわないよ」