雨ふらしの公女は花の王子と恋をする
「あっという間だったね、お疲れさま」
「ありがとうございました」
「しばらく雨が降っていなかったからね、みんな喜んでいたよ。もしまた日照りが続くようだったら、また力を借りなければならないから、しばらくは要観察だけれど」
正面に座るエーデルは馬車の外に目を向けた。その遠くを見るような視線に、ウララは彼の責任を重さをまた実感する。
龍神が起こす災厄は気まぐれで、原因も不明だ。根本的に解決することが難しいと聞く。だから、また日照りや別の災厄があの村を襲う可能性は否めないというわけだ。今回はウララの呪いで解決できたからいいが、そういつもうまくいくとはかぎらない。
そんなことよりも、いまはウララは雨に濡れた村人たちが心配だった。カーテンを上げてちらりと覗くと、なんと彼らはざあざあ降りのなか、鍬を手に畑に向かっていた。
「みなさん、風邪を引かないといいのですが……」
「大丈夫だよ。彼らはこの国一番の農業区を担う誇り高き国民だ。体も丈夫だろう。そういうウララ嬢こそ大丈夫? 遠出は疲れただろう」
「わたしは平気ですが……」
たしかに村人たちの肌はよく日に焼け、いかにも健康で筋骨隆々といった様相だった。常日頃から外で畑仕事をしている彼らなら大丈夫だろうか、とウララは胸を撫でおろす。
ふと、エーデルに見つめられていることに気づいた。
穏やかなものの観察するような瞳を向けられて落ちつかない気持ちでいると、エーデルが首を傾げた。
「ほかになにか腑に落ちないことがある?」
エーデルの言葉にウララは顔を上げる。すると、エーデルと目が合った。