ブライアンのお気に入り～理想を抱いてアメリカにホームステイしたら学園のキングに目を付けられた件～

２人の交際を知った周囲の反応

　そんなカザネの変化は、他の生徒たちの目にも留まり、

「お前のお気に入りの子猫ちゃん、最近ちょっと色気づいているじゃん。もしかしてお前、あの子に手を出したの？」

　割と気安い関係であるバスケ部の仲間の１人が、

「我が校１の人気者に手を出されて勘違いしちゃったかな？　ブスが半端に女を出すと、より悲惨なことになるのにな～って、グハッ！？」

　カザネを侮辱した瞬間、ブライアンに殴られた。殴られた男は鼻を押さえながら、

「ぶ、ブライアン？　どうしていきなり？」

　彼は普段から下品なジョークの多い男だった。しかしそれは自分を強く見せるための手段で根っからの悪人ではない。ブライアンもそれが分かっているので、口で注意することはあっても問答無用で殴ったことは無かった。

　しかしカザネに関してだけは

「お前らが誰をどう評価しようが勝手だけど、俺はアイツに惚れてんだ。今回は知らなかったようだから、これで許すけど、流石に人の恋人を侮辱してタダで済むと思うなよ。じゃなきゃ、また痛い目を見るぜ」

　自分のせいでカザネが侮辱されないように、ハッキリ宣言した。


　その交際宣言は瞬く間に学校中に広がり、

「ブライアンがあのダサい日本人留学生と付き合っている～！？」

　と全校生徒が驚愕した。女子たちは

「嘘でしょ！？　ブライアン！」

　と膝から崩れ落ち、男子たちは

「ミシェルやジュリアを振って、あんなダサい日本人を取るなんてブライアンの趣味って謎だな……」

　と困惑した。

　カザネのもとにも休み時間のたびに、他のクラスどころか他学年の女子までやって来て

「ブライアンと付き合っているのって誰？　ウッソー」

　的なリアクションをした。ブライアンを敵に回したくないのか、あからさまな嫌がらせは無いが、注目だけでもストレスなので

「付き合っていることは隠しておいて欲しかった」

　カザネが思わず不満を漏らすと、

「俺も最初はそうしようと思ったけど、中途半端な関係だとお前が悪く言われても、言い返せないのがストレスでさ。でも俺の短気のせいで、カザネに嫌な想いをさせているな。ゴメン」

　素直に謝ってくれるブライアンに、カザネも気を取り直して

「ううん。私こそ愚痴っちゃってゴメン。ブライアンが庇ってくれるから、直接的に意地悪されないで済んでいるんだって、ちゃんと分かっているよ」

　ブライアンをフォローすると、

「人目にはそのうち慣れるから大丈夫！　むしろメンタルを強くするチャンスかも！」

　自分自身を励ますように笑顔で言い切った。そんなカザネにブライアンは

「カザネはいい女だね」
「えっ！？　いい女ってどこが！？」

　いい子と言われたことはあっても、いい女呼ばわりははじめてだった。動揺するカザネの頭を、ブライアンは優しく撫でながら、

「嫌なことがあっても、グッと堪えて笑えるところ」

　しかしそうやって褒めたものの、

「だけど無理はしなくていいからな。仮に言っても仕方ないようなことだとしても、お前が１人で抱え込むことは無いから、辛い時はちゃんと話して」

　ブライアンの思いやりに、カザネはジーンとして

「ブライアンこそ、いい彼氏だね。会ったばかりの頃はいじめっ子だったのに変わったね」
「前だっていちおう可愛がっていたんだぜ？　今だって本当はたまにお前に「うぎー！」って言わせたくなる。お前は怒っている顔も可愛いからな」

　あえて自分をキレさせたいと笑顔で言うブライアンが、カザネには謎だった。ブライアンはカッコいいけど、ちょっと趣味が変だ。だからこそ美人で大人っぽい米国女子じゃなくて、小柄でダサい日本人と付き合うんだろうなとカザネは思った。