ブライアンのお気に入り~理想を抱いてアメリカにホームステイしたら学園のキングに目を付けられた件~
五月のこと
最初で最後のプロム
あっという間に5月になり、いよいよプロムが近付いて来た。問題のドレスは、おばさんが相談に乗ってくれた結果、着物を着ることになった。
おばさんはカザネの前にも、日本人の女の子をホームステイさせたことがある。その時もプロムに着物を着せてあげたと言う。
おばさんの知り合いに、着物コレクターで親日家の女性が居て
『若い女の子に着物を着せたい! 写真を撮らせてくれたら、タダで貸してあげるわ!』
と普段から言っているそうだ。他の女の子たちはドレスなのに、自分だけ着物は悪目立ちするのではとカザネは心配だった。しかしおばさんは「大丈夫よ」と請け負ってくれたし、やはり無料で借りられるのは大きい。
おばさんの知人とは言え、面識の無い人にいきなり着物を貸してもらうのは図々しくないかな? と気にしつつ、カザネは厚意に甘えさせてもらうことにした。
プロムではペアでファッションを合わせる人も多い。だからカザネもブライアンに、事前に着物を着ることになったと写真付きで報告した。カザネがおばさんの知人女性から借りることになったのは、白い生地に淡いピンクのグラデーションの桜柄の着物だった。
『本物の大和撫子に着せるならぜひこれを!』
と先方が熱烈に推してくれたものだった。本当に日本が好きなようで、カザネが着物を借りることを、むしろ喜んでくれた。しかも当日の着付けまで手伝ってくれると言う。
プロムでは男子が女子にコサージュを、女子が男子にブートニアという胸につける花飾りを贈る。カザネの着物が桜柄なので、桜の花飾りをお店に注文した。
プロム当日。カザネはおばさんの知人に着物を着せてもらい、髪も整えてもらってブライアンの到着を待った。
時間どおりに、マクガン家にやって来た彼に
「わぁ、ブライアン。カッコイイね、そのタキシード。私が着物だから和柄で合わせてくれたんだね」
ブライアンの着ているタキシードは、一部アクセントに和柄の入ったオシャレなデザインだった。タキシードは落ち着いた色の無地が一般的だが、このくらいの遊び心なら奇抜な感じもなく、いい意味で人目を惹きそうだとカザネは思った。
「カザネも着物、似合っているよ。今日は眼鏡もかけてないし一瞬誰かと」
「そんなに別人?」
首を傾げるカザネに、ブライアンはちょっと照れたように微笑みながら
「別人って言うか、桜の精みたい。ゴージャスというよりは可憐で神秘的で、人間じゃないみたいに綺麗」
「さ、桜の精って、明らかに褒めすぎだよ!?」
過剰な賛美にカザネはアワアワしたが、着物を貸してくれたおばさんも
「そんなことないわ。彼の言うとおり、桜の精みたいに綺麗よ。やっぱり着物は日本の女の子に着せるのがいちばんね。日本の職人が丹精に織り上げた生地が、サラサラの黒髪に映えること。このままショーケースに入れて飾ってしまいたいくらいよ」
じゃっかん危ない発言をする友人に、おばさんはビシッと
「ダメよ、リンジー。カザネはブライアンのだから」
「あら、そうね。若いカップルの邪魔をしちゃいけないわね」
ショーケースに飾りたい欲は引っ込めたものの
「でも出発前に2人の写真を撮らせて」
すでにカザネの写真は撮影したが、どうせならペアでもう1枚と、2人はリンジーに写真を撮ってもらった。撮影の前に、コサージュとブートニアを交換してお揃いの花飾りを付ける。撮った写真は後でカザネたちにもくれると言うから楽しみだ。
リンジーに写真を撮ってもらうと、カザネとブライアンは、おばさんたちにお礼を言ってマクガン家を後にした。
おばさんはカザネの前にも、日本人の女の子をホームステイさせたことがある。その時もプロムに着物を着せてあげたと言う。
おばさんの知り合いに、着物コレクターで親日家の女性が居て
『若い女の子に着物を着せたい! 写真を撮らせてくれたら、タダで貸してあげるわ!』
と普段から言っているそうだ。他の女の子たちはドレスなのに、自分だけ着物は悪目立ちするのではとカザネは心配だった。しかしおばさんは「大丈夫よ」と請け負ってくれたし、やはり無料で借りられるのは大きい。
おばさんの知人とは言え、面識の無い人にいきなり着物を貸してもらうのは図々しくないかな? と気にしつつ、カザネは厚意に甘えさせてもらうことにした。
プロムではペアでファッションを合わせる人も多い。だからカザネもブライアンに、事前に着物を着ることになったと写真付きで報告した。カザネがおばさんの知人女性から借りることになったのは、白い生地に淡いピンクのグラデーションの桜柄の着物だった。
『本物の大和撫子に着せるならぜひこれを!』
と先方が熱烈に推してくれたものだった。本当に日本が好きなようで、カザネが着物を借りることを、むしろ喜んでくれた。しかも当日の着付けまで手伝ってくれると言う。
プロムでは男子が女子にコサージュを、女子が男子にブートニアという胸につける花飾りを贈る。カザネの着物が桜柄なので、桜の花飾りをお店に注文した。
プロム当日。カザネはおばさんの知人に着物を着せてもらい、髪も整えてもらってブライアンの到着を待った。
時間どおりに、マクガン家にやって来た彼に
「わぁ、ブライアン。カッコイイね、そのタキシード。私が着物だから和柄で合わせてくれたんだね」
ブライアンの着ているタキシードは、一部アクセントに和柄の入ったオシャレなデザインだった。タキシードは落ち着いた色の無地が一般的だが、このくらいの遊び心なら奇抜な感じもなく、いい意味で人目を惹きそうだとカザネは思った。
「カザネも着物、似合っているよ。今日は眼鏡もかけてないし一瞬誰かと」
「そんなに別人?」
首を傾げるカザネに、ブライアンはちょっと照れたように微笑みながら
「別人って言うか、桜の精みたい。ゴージャスというよりは可憐で神秘的で、人間じゃないみたいに綺麗」
「さ、桜の精って、明らかに褒めすぎだよ!?」
過剰な賛美にカザネはアワアワしたが、着物を貸してくれたおばさんも
「そんなことないわ。彼の言うとおり、桜の精みたいに綺麗よ。やっぱり着物は日本の女の子に着せるのがいちばんね。日本の職人が丹精に織り上げた生地が、サラサラの黒髪に映えること。このままショーケースに入れて飾ってしまいたいくらいよ」
じゃっかん危ない発言をする友人に、おばさんはビシッと
「ダメよ、リンジー。カザネはブライアンのだから」
「あら、そうね。若いカップルの邪魔をしちゃいけないわね」
ショーケースに飾りたい欲は引っ込めたものの
「でも出発前に2人の写真を撮らせて」
すでにカザネの写真は撮影したが、どうせならペアでもう1枚と、2人はリンジーに写真を撮ってもらった。撮影の前に、コサージュとブートニアを交換してお揃いの花飾りを付ける。撮った写真は後でカザネたちにもくれると言うから楽しみだ。
リンジーに写真を撮ってもらうと、カザネとブライアンは、おばさんたちにお礼を言ってマクガン家を後にした。