ブライアンのお気に入り~理想を抱いてアメリカにホームステイしたら学園のキングに目を付けられた件~

10年後も一緒に居たら

 夜。ブライアンは寝室のベッドで、オーウェンがコーチを勤めるアメフトチームの試合をスマホで見ていた。

 画面の中ではオーウェンがテキパキと、子どもたちに指示を出している。カザネはブライアンの隣で、その映像を見ながら

「お兄さん、すっかり元気になったみたいで良かったね」
「うん……絶対に変わらないと思っていたのに、意外となんとかなるもんだな」

 いつか立ち直るとしても、もっと大変で時間がかかると思っていた。しかしオーウェンは居場所を変えただけで、水を得た魚のように元気になった。ほんの少しのきっかけで、これほど変わるのかと、ブライアンは奇跡を見たような気持ちだった。

「でも、ちょっと残念だな」

 ブライアンの一言に、カザネが「何が?」と首を傾げると、彼は意味深に微笑んで

「もっと手こずって打ちのめされて、カザネにいっぱい慰めてもらうはずだったのに」
「へ、変な意味で言っている?」

 たじろぐカザネを逃がさないように、ブライアンは妻を抱き寄せると

「夫として妻の愛情を求めているだけだよ? 同じ家に住んでいても、お互いに仕事が忙しくて、新婚旅行にも行けてないし。せめて2人の時くらい新婚気分を味わいたいなって」
「もう結婚してから1年も経っているけど!? と言うか、一緒に暮らし始めてからブライアンずっと甘々なのに、これ以上甘くなることある!?」

 ブライアンの秋波に当てられたカザネは恥ずかしさに叫んだ。しかしブライアンは、そのままカザネに覆いかぶさると

「むしろこれからが本番だろ? 借金を清算して結婚して、身内の問題も片付いて、ようやく解禁になったのに」
「解禁って?」

 無防備にハテナを飛ばすカザネの耳に、ブライアンは唇を寄せて

「子作り」
「ふぇぇっ!?」

 全身で衝撃を受けるカザネに、ブライアンはニヤニヤしながら

「約束忘れちゃった? 10年後も一緒に居たら、孕ませてやるって言っただろ?」

 確かに高校生の時に、そんな約束をしたとカザネは思い出した。あの頃はお互い叶わぬ約束だと思っていたが、気付けばとっくに10年経っていた。

「は、はわわわ」

 自分の身体の下で羞恥に震えるカザネを、ブライアンは上機嫌で見下ろしながら

「カザネのそういう反応、久しぶり。可愛い赤ちゃんができるまで、いっぱい愛し合おうね?」

 高校卒業から28歳の現在まで、ずっと一緒に暮らしているカザネとブライアンだが、孕ませる前提のセックスははじめてだった。裸でカザネと抱き合い、彼女の中に射精したブライアンは

「好きな女に中出しするってヤバいな。ようやく全部、俺のものって感じ」

 達した後もすぐには抜かずに「すごく満たされる」と余韻に浸るようにカザネと体を重ねていた。カザネも自分に覆いかぶさるブライアンの身体を、愛おしそうに抱き返しながら

「私もブライアンに、赤ちゃん作ってもらえて嬉しい」

 はじまる前はブライアンの色気に狼狽えてしまったが、本当は高校生の頃から望んでいたことだ。「ようやく全部俺のもの」というブライアンの感想と同じで、カザネもようやく2人の人生が1つに重なった気がして、とても嬉しかった。

 しかしカザネの言葉を、ブライアンはわざと歪めて受け取って

「へぇ? カザネ、子作り気に入ったの?」
「へっ?」
「じゃあ、もっと期待に応えないとな?」

 ニコッとしたのも束の間、さっそくキスしながら体を弄って来るブライアンに

「うぇぇっ!? 今じゃなくていいよ! 今日はもう十分だから!」

 いつもはカザネに嫌われないように、彼女のペースに合わせているブライアンだが

「ダメ。もう火が付いた」
「ぶ、ブライアン~!?」

 ブライアンの中では、いちおうカザネは翌日休みなので、多少無茶しても問題ないという計算があった。逆にブライアンは翌日も仕事で、しかも法廷で裁判だった。

「こんなに無茶して大丈夫なの?」

 とカザネは心配だったが、ブライアンは見目や頭脳だけでなく体力も優れている。

 午前中はベッドから起きられないほど抱き潰されたカザネとは裏腹に、翌日のキング弁護士はいつも以上に絶好調で、無事に勝訴をもぎ取ったという。
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