この薄汚い世界に、何を求める。



ついて来なければ良いけど、どこかでついて来てほしいと思っている自分も居る。

そんな期待を持って時々視線だけを後ろに向けると、視界の端で茶色と黒と白の毛がふわふわと揺れている。



「ついて来てる…」



どうかこのまま家までついて来て。


歩道で青信号が点滅していたら、いつもなら急ぎ足で渡ってしまうのも、わざと止まったり、自分の体の疲れの心配より、猫ちゃんが車に轢かれていないか心配になったり。



自分より物理的に小さい人や弱そうな人を見ると、他人軸にぶれる。


この猫ちゃんも他人軸で見て、体が小さいのにひとりぼっちで可哀想だと、自分の会社での立場と同じような気がした。



数時間だけでも一人じゃないと分かって欲しくて、人に助けられる温もりを与えたかった。





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