この薄汚い世界に、何を求める。





「戻れるって!?」


「えぇ。あなたはまだ、ここに来るべきではないです。人生をやり直すのに、自殺する必要はなかったということですよ」


「…でも、苦しかったんです。あんな会社、早く逃げ出したかった」


「選択肢は他になかったですか?辞めるという選択肢があった。職場の状況の悪さを、仲の良い人か信頼できる上司に話すという選択肢があった。逃げるにしても、色んな逃げがある中で自殺を選んだあなたは、間違っています」


「仲の良い人…、信頼できる、…上司。俺にはあの選択肢しかなかったと思います」


「では、あなたの過ごしている環境は、会社だけですか?家庭や趣味は?仕事が全てではないんですよ。人は悩むと視野が狭くなる」





案内人の言葉は、一つひとつに妙な説得力があった。


会社だけじゃない自分の環境。

全てを会社のせいにして、自分を蔑ろにしていたのかもしれない。



もっと周りに目を向ければ、自分と同じように悩みを抱える人が居て、支え合えたかも。



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