この薄汚い世界に、何を求める。
「あちっ……本当だ。香りが強いのに柔らかくて良い。味もまろやかで甘くて飲みやすい。美味しい」
「良かったです。うちのこだわり、気に入ってもらえて」
「あなたの体や心にも、それぐらい愛情を込めて生活していますか?」
また始まった。もう、それ良い。いらない。
そっぽを向いて、分かりやすく無視すると、向こうも分かりやすくため息をついてきた。
さっきまでコーヒーを褒めてもらって、ほっとリラックスしたのも束の間、重いため息に、何も求めていないのに私が悪者にされるのは、気に障った。
「悩みを誰かに話して解決策を教えてもらうことは、他人任せじゃないですよ?」
「え?」
呆れられたため息と勘違いした。
私に向かってくるため息は、今まで全部呆れか見下しだったから。