この薄汚い世界に、何を求める。
呼び捨てでは呼べず、誠さんと呼ぶことにしたけど、苗字に鶴が入っていて何ともおめでたい。
誠さんと呼ばずに千代鶴さんと呼びたいぐらい。
「俺、千代鶴っていう苗字が嫌いで。抜けた顔して名前負けしてるって、いつも言われてきたんで、苗字で呼ばれると、どんどん自分が嫌いになる」
千代鶴さん呼びを提案しようとして、すぐにやめた。自分が嫌いになる気持ちは、すごく分かるから。
お局と同じ空間に居るだけで、常に自分の存在を否定されているように感じる。
そんなネガティブになる自分が、やり返せない自分が嫌いになる。
「るいさんも、きっと同じなんだろうなって。だから助けたいんです。あの場所は、るいさんが居る場所じゃないって教えたい。苦しいなら逃げれば良い」
「逃げたら負けになりませんか?」
「問題から目を背けるのが、逃げなんです。ちゃんと向き合った結果、あそこから逃げると決めたなら、それは逃げじゃない」