星降る夜に、あのラブソングを。

第 4 話 親の存在



 2学期が始まった。
 相変わらず1人『サクラ学級』に篭もる私。

 武内先生は学年集会があるからということで、そっちに行っている。そこで聞いた話をあとで私に教えてくれるらしい。

「……」

 9月とはいえ、まだまだ暑い。窓から入ってくる生暖かい風が気持ち悪くて、何となく嫌な気分。

 今朝スマホで見た天気予報では、今日は晴れて明日から雨となっていた。けれど見た感じ、青空はもう厚めの雲に覆われ始めているみたい。

 曇りも雨も嫌いだ。何だか……憂鬱。


「………」


 2学期になり、黒板の隅っこに書かれている歌詞が変わった。


“人を信じられなくなった僕は
全ての愛を拒否して
孤独の道を選んだ
閉ざされた心の奥で泣いていた

自分自身も気づかないようにしていた
そんな僕の全てを愛してくれた君
『大丈夫、ひとりじゃない』その言葉ひとつで
単純な僕は『救われた』ような気がした”



 武内先生は、何故この歌詞を黒板に書いたのか。
 やっぱりそれが私には分からない。

 結局前の歌詞も何の曲なのか分からないままだった。



 何故なら
 歌詞検索をしても、ヒットしないから。



 本当に今話題のアーティストの曲なのだろうか。

 そんな疑問を抱いたまま、武内先生には聞けないでいた。



「柊木さん、お待たせ」

 学年集会から戻ってきた武内先生は、冊子を持って戻ってきた。その冊子には『漢字検定試験受験案内』と書かれている。

「じゃん、漢字検定」
「漢字検定……」
「試験を受けて見るのも、なかなか良くない? 学校で受験できるよ」

 私の席の隣に座り、冊子を私の目の前で広げた。確かに、こういう試験を受けたことが無い私には良いかもしれないけれど……。

「受ける時、他の生徒も居ますよね」

 そう問うと先生は小さく、小さく頷いた。だけど、そんな先生の思いも無下にしたくなくて……少しだけ首を傾げて悩む。

「……」

 無言のまま黙り込んでいると、「あっ」と小さく声を上げた先生。手をポンっと叩き、冊子を捲ってあるページを開いた。

「学校じゃなくて、一般会場でも大丈夫」

 ニヤッと笑った武内先生に釣られて、私の顔も自然とニヤッとなる。私は武内先生に誘われ、漢検3級を受験してみることにした。



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