星降る夜に、あのラブソングを。

第 6 話 失ったもの



 行く宛も無く街を彷徨う。
 賑やかな夜の桜川市の中心を制服で1人。

 それはもう、かなり人の目につく。


「君、何してんの!?」
 

 酔っ払った知らない人の声。
 もはや話し掛けられても何も思わない。


 全ての声を無視して、1人彷徨い続ける。


 すると、近付いてくる警察2人。

 誰かが通報したのかな。
 放っておいてくれたら良いのに。

 そんなことを思いながら、軽く会釈をした。

「君、どうしたの。夜も遅いよ」
「……知ってます」
「1人だと危ないから親御さんに連絡するよ? 学生証の提示と、親御さんの連絡先を教えてくれる?」
「……良いですけど、多分迎えになんて来ませんよ」
「えっ?」
「捨てられたのです」


 警察に近くの交番へ連れて行かれ、椅子に座らされる。初めて入る交番が珍しくて、私は少しだけ室内を見回した。

 その間、家に電話を掛けたみたい。
 だけど結果は予想通り。


 迎えになんて来るはずがない。追い出した張本人なのだから。


 困った様子の警察。
 2人はしばらく考えた後、学校に電話を掛けると言ってまた奥に消えていった。


 こんな遅い時間に学校に掛けてもどうしようも無いでしょ。なんて思いつつ、窓の外に目を向ける。


 ネオンライトが煌めき、夜なのに眩しい街。

 良く知る桜川市なのに。
 何だか、知らないところに紛れ込んでしまった気がした。


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