星降る夜に、あのラブソングを。
「じゃーん。おにぎり、サンドイッチ、お菓子、ジュース。何でもあるよ。好きな物を好きなだけ食べて!」
「先生……ありがとうございます」
軽く頭を下げて、おにぎりを手に取った。
ツナマヨネーズのおにぎり。冷たいおにぎりなのに。何故かそれにさえ優しい温かみを感じる。
いただきます、と小さく呟いておにぎりをフィルムから剥がす。そしてパクッと一口かじると、お米の甘さが口いっぱいに広がった。それがまた妙にグッときた私。
追い出されて初めて、おにぎりをきっかけにして涙を流すことができた。
「……柊木さん」
「先生。おにぎり……美味しいです」
泣きそうな表情で私を見つめていた先生の目から、また涙が一筋零れ落ちる。その涙は止め処なく溢れ、先生は一度も拭うことをせずに私の体を抱き寄せた。
急な出来事に驚き固まっていると、先生は私の頭を撫でながら、より強く抱きしめる。初めて感じた他人の肌が温かくて、むず痒くて。でも、優しくて。私も体が震えて涙がより一層零れ落ちる。
抱きしめている先生の体も震えていた。
それに気付いて、先生の顔を覗き込むように見上げる。すると目が合った先生は、声を震わしながら小さく、小さく囁いた。
「死ねばいい人なんて、いないよ。今は物凄く辛いと思うけれど、柊木さんは死ななくていい」
「……でも、誰からも必要とされません。私がいなくても、誰も困りません」
「……違う。君がいなきゃ……僕が困る。あの『サクラ学級』では、君が居てこその僕だから」
「……」
嘘だ。率直にそう思った。
武内先生の言葉は、私から自殺願望を取り除く為の口実。そんなこと分かっている。
中学時代もそうだった。あのおじさんも、本当に話し相手が欲しかったわけでは無い。私から自殺願望を取り除く為の口実だったと、今なら良く分かる。
高校の先生は、やっぱり優しい。
そう思うと、ふいに全身から力が抜けていくような感覚がした。
「……柊木さん?」
「……」
温かい武内先生の腕の中。
安心から来るのか、何なのか分からないけれど。
私は、自分でも気が付かないうちに意識を失っていた。