星降る夜に、あのラブソングを。


 その後、おじさんのお陰で私の学力はメキメキと伸びた。
 2学期末テストで4位だった私。学年末テストでは余裕で1位にまで上り詰めた。


 テストの結果後、また掛かってきた担任からの電話。

 担任は、クラスで表彰したいから教室に来て欲しいと言ったのだ。

 テストで1位を取って表彰だなんて。そんなもの聞いたことが無い。

 そう思って何度も断ったのだが、担任は諦めなかった。

 毎日毎日掛かって来る電話。




 それに耐えられなくなってしまった私は、ついに教室に行く決断をしてしまった。




 担任と約束をした日。

 久しぶりに入った校舎内は妙に静まり返っていた。

 それにまた不安を覚えつつ、全然近寄らなかった教室に向かう。



 教室の扉を開けると、クラスメイトは全員席に着き、担任は教壇に立っていた。

 まだ始業前なのに、異様なその光景。

 軽く会釈をして教室に入ると、突如天井から降ってきた黒板消し。
 私にしっかり命中すると「シャッ!!」と1人が声を上げ、ガッツポーズをした。



 それを引き金に始まる、虐めの大運動会。



 男子に羽交い絞めをされ、女子にハサミで髪の毛を切られ。

 ある人は制服を刻み。

 ある人は上から水を掛ける。

 ある人は握り拳を振り上げ。

 またある人は掃除用のモップを体に擦りつけた。

 それを、複雑そうな表情で見つめるだけの担任。



 グルだ。率直にそう思った。
 担任は生徒に取り込まれており、私を呼びだしたのもの恐らく主犯格の命令。



 私を助ける者など、誰もいない。

 私の声に耳を傾ける者など、誰もいない。



「ねぇ、やめてよっ!! 私が一体、何をしたと言うの!? 誰か教えてよ! 悪いところがあったら直すから……!!」
「は? 別に悪いところなんて何もないよ。“ただ、いじめやすい”。“授業を受けていない癖にテストの順位が良い”。そして、それがムカつく。ただ、それだけ」


 その言葉に、クラス全員が笑い出した。


「……っ」



 異常だ……異常……。

 このクラスは……この中学校は、誰がどう見たって、異常だよ――……。



 そんな私の声は虚しく、楽しそうなクラスメイトの声にかき消され続けた。


 誰にも助けて貰えなくて。終わりも見えなくて。ただただ辛かったあの頃。





 これが、高校生になった今でも私が引きずり続けている、“トラウマ”の正体だ――……。



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